絶体絶命の転生ライフ、カタブツ騎士団長の溺愛にたじたじです ~追放された子猫は愛妻にジョブチェンジ!?~
 俺自身、月に幻影を見せられたのかもしれないと考えたこともあった。だが、たしかに少女はいたのだ。夢まぼろしなどではないと、俺の五感が彼女の存在を確信していた。
 あれ以来、寝ても覚めても少女のことが頭から離れない。
 今頃彼女は、どこでなにをしているのだろう。無事に、親もとに帰っているのだろうか? 寒さに震えていないだろうか? 腹を空かせていないだろうか?
 こんなふうに、気づけばいつも彼女のことを考えていた。
 懐かしいような、放っておけないような……初見の相手に抱くには少々不可解なこの感情はなんなのか。
 俺は今朝、ブラッシングを受けて幸せそうにしているルーナを眺めながら、この疑問にひとつの答えを見つけていた。
 とても不思議なのだが、あの少女は色彩といい雰囲気といい、ルーナにとてもよく似ている。ルーナが人間だったら、間違いなく彼女と瓜二つになっていただろう。そんな、大切なルーナにそっくりな少女が、もし不幸な状況にあるのなら見過ごせない。俺が手を尽くし、不足なく暮らせる環境を整えてやりたい。
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