絶体絶命の転生ライフ、カタブツ騎士団長の溺愛にたじたじです ~追放された子猫は愛妻にジョブチェンジ!?~
 今はなにも物が置かれておらず、貯蔵庫の中はがらんどうだった。管理の手も入っていないため空気は淀んでおり、お世辞にも綺麗とは言い難いが、ここにいれば最低限雨風を凌ぐことはできる。なにより、万が一征伐で残党が出て森に逃げ込んだ時に、ルーナの存在を隠し、守ってくれる。
「ルーナ、すべて終わったら迎えに来る。それまでここで大人しく待っているんだぞ」
 俺はマントを外して地面に敷くと、その上にそっとルーナを横たえる。脇に携帯食と、目覚めた時にルーナが暗がりで怯えぬようランプを置いた。
 ルーナはピクピクと瞼を揺らしており、もうじき目を覚ましそうだった。だが、今は目覚めを待っている時間はない。
 俺は名残惜しくやわらかな頭部をひとなでしてから、ルーナに背中を向け、地上に続く階段に足をかけた。
《ふみゃ(レリウスさま、待って……)》
 後ろからあがった鳴き声を耳にして振り返ると、ルーナが前足を支えに半身を起こしながら、俺を見つめていた。
「ルーナ! 目覚めたのか、よかった!」
< 174 / 252 >

この作品をシェア

pagetop