絶体絶命の転生ライフ、カタブツ騎士団長の溺愛にたじたじです ~追放された子猫は愛妻にジョブチェンジ!?~
 これをユーグに言えば、呆れた眼差しで小言のひとつもこぼされそうだ。とはいえ駆け込み出勤になってしまっただけで、業務にはなんら支障をきたしていないのだから、わざわざ詳しい経緯を伝える必要などない。
「あぁ、おはよう。出勤前に少し手が離せない状況になってしまってな。だが、こうして始業にも間に合ったわけだし、なにも問題はなかろう?」
 何食わぬ顔で答える俺に、ユーグは俺の頭のてっぺんからつま先までを流し見て、不服そうな表情で口を開いた。
「大ありです。着衣の乱れは心の乱れ」
 ユーグが言い放った台詞に、咄嗟の理解が追いつかない。眉間にもクッキリと皺が寄る。
「おいユーグ、それはいったいなんの標語だ?」
「以前、レリウスさまが新任の騎士たちを叱咤していた際の台詞です」
 俺は騎士団長という役職柄、人前で話す機会は少なくない。もしかすると、過去にそんな台詞を言ったこともあったかもしれないが……。
「それがなんだというんだ?」
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