絶体絶命の転生ライフ、カタブツ騎士団長の溺愛にたじたじです ~追放された子猫は愛妻にジョブチェンジ!?~
「まったく、朝の身支度後になにをしているのやら……。レリウス様の騎士服、膝下がひどい惨状になっていますよ」
「ん?」
 ユーグの指摘を受け、おもむろに目線を落とせば……なるほど。
 たしかに、ズボンの膝下から裾にかけてルーナの爪でついてしまったと思しきほつれの他、皺や一度濡れて乾いたような痕が随所に確認できた。
 ふむ、そう言えばルーナが必死になって俺の足にジャレついていたな……。
 出がけの俺を引き止めようと、追い縋ってくるかわいい姿。ペロルの二本目を強請ってしがみ付く様子も、それはそれはおいしそうに食べるとろけた表情も。思い出すどれもこれもが愛らしく、頬が緩むのを止められない。
 ……おっと、いかん。ここでニヤついていては、ユーグになにを言われるかわかったものではないぞ。
 俺は意識的に油断すれば弧を描きそうになる口もとを引き結び、表情を引きしめた。とはいえ、騎士服は黒い生地だし、これくらいなら遠目にはわからんのでは……。
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