絶体絶命の転生ライフ、カタブツ騎士団長の溺愛にたじたじです ~追放された子猫は愛妻にジョブチェンジ!?~
「いえ。ネコがブランケットを銜えて外に出ていき、それに包まって夜明かしするなど見たことも聞いたこともなかったもので」
 ユーグが小難しい顔で顎に手をあてているのに気づき尋ねてみれば、こんな答えが返った。
「ほぅ、ならばルーナが初か。やはり、うちのルーナは賢いのだな」
「……レリウス様、私もまたルーナに会いたいのですが、今度お邪魔しても?」
「そうか! お前もルーナに会いたいか! ならば今度の休みに屋敷に来い。特別にペロルを与える役を譲ってやろう。ペロルを夢中でペロペロするルーナは天使の如きかわいさだぞ」
「ぜひ、伺わせていただきます」
 ユーグの表情は『ぜひ』という言葉とは裏腹に、なぜか堅かった。
 会話はここで一旦終わり、ユーグは書類束を手に騎士団長室を出ていった。
「……やはり、ルーナは普通じゃない。ルーナに骨抜きのレリウス様はまったく頼りになりませんし、ここは私が目を光らせておかねばなりませんね」
 ユーグが扉を閉める直前に小さくこぼした台詞は、今頃ルーナはどうしているだろうかと思考を巡らす俺の耳を素通りした。
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