一途な部長は鈍感部下を溺愛中
「コラ! お声掛けする前に襖を開けないの!」
キリリと凛々しい眉を釣り上げた女性が、軽く仲居さんの後頭部を小突く。
それから、私たちへと視線を向けると一点、眉を下げ愛嬌のある笑みを乗せた。
「ごめんなさいね、新人なもので。坊ちゃんもお邪魔してごめんなさいね」
えっ、と部長を見れば、部長は苦笑しながら首をすくめて居た。
「その呼び方はやめてくださいよ……」
「あら、女の子連れてくるなんて初めてだったからつい気持ちが昂っちゃって」
うふふ、と意味深に視線を流され、笑みを象った真っ赤な唇に釘付けになる。
艶っぽい瞳に、色っぽいアイライン。瑞々しい唇。匂い立つような色香に、部長に髪を弄ばれていた時よりドキドキ……いや、ドギマギしてきてしまった。
「やだ、緊張してる? かわいい〜」
手際よくテーブルに料理を並べながら、時々声をかけられて「えぁ」とか「ぅあ」やら変な返事しか出来なくなる。
そんな私に恐らく女将さんであろう女性は何がそんなに楽しいのかという程ニコニコして、時折艶やかな微笑みを送ってきた。