一途な部長は鈍感部下を溺愛中
「か、かわ……」
「まさか、その間に他の男に言い寄られてるとは……しかも、当の本人は満更でもなさそうだったし?」
きゅ、と眉根を寄せた部長に驚く。満更でも無いなんて、とんでもない。
「断ろうとしてたところでしたよ!」
「本当かあ? ならなんであの男に、恋人の有無を訊かれた時に即答しなかった」
咎めるような視線で問われ、息を呑む。
「それは……」
無意識に視線が泳ぎそうになると、私の髪で遊んでいた指先が頤に触れる。そのまま顎先を固定されると、目を逸らせなくなった。
「それは?」
先を促すように繰り返され、それに従うように唇を戦慄かせた瞬間、
「お待たせ致しました……あっ……!」
なんの前触れもなく襖が開き、和服姿の若い女性が現れた。
恐らく料理を持ってきてくれたのだろう。頭を下げていた女性は顔を上げ、私たちを見て目を見開いた。
対する私もびっくりして目を見開き、部長は「ああ……」と落ち着いた表情で言うと、何事も無かったかのように私から手を離す。
変なところを見られてしまった衝撃から固まる私と、動揺から抜け出せていない仲居さんを助けてくれたのは、熟年の女性だった。