一途な部長は鈍感部下を溺愛中
目を丸くしたままその箱に触れることも出来ない私の様子に部長は微かな笑みを零し、両手で箱を掬いあげる。
そして、左手を台座のように箱の下に添え、右手が上半分を覆うように掴み──そのまま、箱が開けられた。
「俺に、君の薬指を予約させて欲しい」
現れたのは、中央に一粒のダイアモンドが埋め込まれたシンプルなデザインの指輪。
傷一つないつるりとしたプラチナが、絶え間なく照明からの光を照り返し、耀いている。
それは予想だにしていなかった贈り物で、手放しで喜ぶにはあまりにも動揺が大きかった。
中心に鎮座し、神聖な空気すら纏っているようなそれから目を逸らせずにいると、持ち上げられていた箱が静かにテーブルに置かれる。
ハッとして視線をあげると、少しだけ困ったような顔で、部長がこちらを見つめていた。
「困らせてしまったか?」
その質問には、すぐに否を返すことが出来た。
驚いて、今でも受け止めきれていないけれど、困っているわけではない。
心臓は確かに早鐘を打っている。でもそこにはちゃんと、喜びも含まれているのだ。