一途な部長は鈍感部下を溺愛中
「び、びっくりはしましたけど……嬉しい、です」
素直にそう呟けば、部長の表情がどこかホッとしたように緩んだ。
「そうか。すまない。性急すぎることは分かっていたんだが、どうしても、右手でもいいからこれを嵌めたくてな」
部長が、手のひらをこちらに向ける。
誘い出すような大きなそれに、私も導かれるように右手を重ねた。
「結婚の時期については、ゆっくり考えていこう。然るべきタイミングでまた、俺からプロポーズさせてくれな」
「……はい」
正直、もう胸がいっぱいだ。これで十分だと思えるくらいに。
ある日突然、記入済みの婚姻届を手渡されて、君の欄を書いてくれとぞんざいに言われたとしても、喜んで頷いてしまう自信があった。
この人との未来に、何も不安なんてない。
強いて言うなら、こんなに幸せでいいんだろうかと少し怖くなるくらいで。
「……君の手、少し震えてるな」
「すみません、緊張してしまって……」
なんなら手汗も滲んでいるかもしれない。恥ずかしい。
私の言葉に、部長は無邪気な笑みを見せた。
「どうして君の方が緊張してるんだ?」