一途な部長は鈍感部下を溺愛中
突然力が入らなくなって、カクンとその場に崩れ落ちる。
自然と離れた唇から銀の糸が垂れて、私はそれを拭うように唇を擦りながら、羞恥のあまり滲む視界で部長を見上げた。
「な、な、なん……!」
なんですか今のは! 頭の中ではそう叫んでいた。
あまりにも突然の仕打ちで、幻か? とも思ったが、腫れぼったい己の唇と、てらてらと濡れる部長の唇が現実を突き付けてくる。
「目、覚めたか?」
フン、と鼻で笑った部長が、私の唾液で濡れた唇をペロリと舐めた。その光景に眩暈がする。
「か……勘弁してください……」
目が覚めるどころか、心臓発作を起こして永遠の眠りにつくところだった。
腰が抜けて立てない私は、両手で顔を覆って呻いた。
すると微かな衣擦れの音がして、指の隙間からそろ〜っと窺うと、部長が目の前にしゃがみこみ、こちらに視線を合わせようとしてくる。
「君が意地悪を言うから。で? 目は覚めたのかい」
まだおねむだと言うならもう一度してやろう。そう手を伸ばしてきた部長から、おしりと両手を使って全力で後ずさる。
そのせいで何かの家具にゴチンッと頭をぶつけたが、パニックだった私は痛みを感じなかった。