よるの数だけ 守ってもらった
わたしが事故に遭ったのは学校寄りの通学路。
ひと気のない静かな田圃道だけど、車通りは比較的多い。だから通るときは気をつけていた。
本当にたまたま。
涙でぼやけた視界に、刺すようなハイライト。
自己ベストなんか悠に超えあっという間に地面に叩きつけられて、痛みよりも先に気を失った。
次に目が覚めたとき一番に見たのは、傷と痣だらけになって、変な方向にぐにゃぐにゃと曲がった、いのちよりも大切な脚だった。
「隼奈、待ってるから一緒に帰らない?相談したいことがあるんだけど」
部活の合間で水を飲みにきた彼女にそう声をかけると、彼女は疲れなんて一切感じさせない笑顔で頷いた。
隼奈は別の中学だったけれど、その存在は知っていた。
『鳥羽さんはどこの高校に行きますか!?』
さね先輩を見かけた大会でそう声をかけられたけれど、それよりも前から知ってたんだ。
きっとわたしと同じくらい跳べる子。
きっと、いつか、わたしを超して翔んでいく子。
嘘の高校を教えたのに、どこかで調べたのか、1年遅れで入学してきた。
まだ未熟な、成長していくであろう羽根をはためかせながら。
隼奈が目の前に現れてから、
わたしは、自分がふつうであると、言い聞かせるようになった。
隼奈が真っ直ぐな目を向けてくるたび、
何度も勝手に出てくる涙を我慢したし、そのうち我慢できなくなった。