よるの数だけ 守ってもらった
如月初雪がわたしに近づき躊躇いもなくまぶたに向かい指を伸ばす。
反射的につぶったら、目に溜まっていたものが粒になって落っこちた。
頬を撫でられて目をあけると、歪みがクリアになり、体温の持ち主の姿が真っ直ぐと映る。
なんてきれいなんだろう。
きっと本当はわたしなんかが触れていいようなひとじゃなかった。
もう、間違えたくないよ。
「これ以上いけないことは、したくない…したくないよ」
──── ねえ、たすけて。
そう解っているのに、このひとなら、受けとってもらえる気がして手を伸ばす。
平気なふりはしたくないし、
おかしい自分を、正常に戻したい。
いのちを奪うことが、
どれほど懼ろしいことなのかを、思い出したい。
思い出さなければいけない。
血色のわるい手が、やっぱり何の躊躇いもなく、自分本位で伸ばしたわたしの手を掴み、ぎゅうっと包み込んだ。
「病院に行こう。…僕が通ってるところなら、安心だと思うから」
言葉を選んでいるようで、考えなしの、優しいせりふだと思って笑みがこぼれた。
「莫迦だなあ…。連れて行くべき場所なら他にあるでしょ」
ぬくいね。
初めてきみを見たときに降っていた雪のように。