俺の恋人のフリをしてほしいと上司から頼まれたので「それは新手のパワハラですか」と尋ねてみたところ
「モニカに断られたら? 俺は、一生結婚しない。モニカ以外の女性と一緒になりたいとは思わない」

 きゃー、とまた黄色い声があがった。その声の主は両手を胸の前で重ねて、息子の行く末を見守っているようだ。
 完全にモニカは逃げ場を失った。

「あ、はい」
 とつい頷いている自分がいることにモニカは気付いた。
「ほ、本当か」
 嬉しさのあまりカリッドはモニカをぎゅっと抱きしめた。双方の親がいるにも関わらず。

「あら、良かったわねぇ」
 という母親の言葉で、二人きりの世界から引き戻されるカリッド。

「そういうことで、父上、母上。俺の見合いは、その、無かったことでいいんですよね」

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