ママの手料理 Ⅱ
確かに、紫苑ちゃんの記憶は辛くて悲しいものが多いかもしれない。


でも、俺達が必ず全部受け止めるから。


俺達は今の紫苑ちゃんも好きだけど、それ以上に今までの彼女も好きなんだ。


約束する、俺は君の黒い部分も余すことなく抱き締める。





絶対に大丈夫だから、俺を信じて。





「紫苑ちゃんは、自分の部屋のクローゼットに隠れるのはどう?あそこなら絶対に見つからないよ!」


そう、紫苑ちゃんは見つからなかった。


息を殺して、余りの恐怖に耐えきれずに気を失って。


「クローゼット?」


俺に問い返す彼女は、誰が見ても分かる程狼狽えていた。


「うん!此処だよ」


俺は颯爽と彼女の部屋に入り、おもむろにクローゼットを開ける。


ハンガーに沢山の服が掛かっている中、俺は手で人が潜り込めそうな隙間を作った。



「入って、紫苑ちゃん。…皆死んじゃったのに1人だけ見つからなかった、あの時みたいに」



「死んだ…?や、誰が…?」


開け放たれたクローゼットを目の前にして、彼女は震えながらそう声を上げた。


その言葉は誰かに向けたものではなく、ただ彼女の周りをゆっくりと漂う。


「誰が死んだと思う?押し入れに隠れた子も、ベランダに隠れた子も死んじゃったよ」


最大限まで、心を鬼に。
< 233 / 273 >

この作品をシェア

pagetop