ママの手料理 Ⅱ
彼からのメッセージに聞こえなかった振りをした俺は、


「何処に隠れよう!?どうしよ…あ、航海押し入れの中隠れられる?」


2階に到着してすぐ、やんわりと航海の隠れ場所を指定した。


「押し入れですか?良いですよ。笑美さんの部屋って確か和室ですよね、そこに行ってきます」


紫苑ちゃんが家族と隠れんぼをしたあの日、押し入れに隠れていて死亡したのは10歳のナナという女の子。


殺された衝撃で床に落下した彼女は、多量出血で真っ白だった服が血の色に変わってしまっていたとか。


俺達に敬礼をして走り去る彼もまた、悲しい事件を彷彿とさせる白い服を着ていて。


「押し入れ、?」


航海の後ろ姿をぼんやりと見送る紫苑ちゃんの目が、微かに光った気がした。



「ろくじゅうにー、…ろくじゅうさんー……」


階下でのカウントダウンの声は異常に大きくて、2階でウロウロしている俺達の耳にもはっきりと聞こえてくる。


「俺らも隠れよう!どうしよ…俺はベランダに隠れるから、紫苑ちゃんは…」


琥珀によると、あの日ベランダに隠れて寒空の下で死亡したのはまだ5歳だったハズキ君。


お気に入りだったという黒い帽子と共に血の海に沈んだ彼は、氷よりも冷たくなっていたらしい。


「ベランダに、隠れる…?」


(お願い、全部思い出して)
< 232 / 273 >

この作品をシェア

pagetop