ママの手料理 Ⅱ
mirageの中では最年少で、自分の両親を殺した経験のある彼は随分俺達と感覚が違うらしく、この状況をどう捉えているかが掴めない。


とは言っても、たまに悲しそうな顔をしているから心配はしているだろうけれど。



銀子ちゃんが運転席に乗り込み、音を立ててドアを閉めた。


「…本当に、どこに行っちまったんだろうな」


天才ハッカーの呟きに、俺は黙りこくる。


(そうだよね、皆不安で仕方ないよね…)


俺もこの頃無意識に、バイト中でも客の中に紫苑ちゃんが紛れていないか探している事がよくある。


彼女がこんな場所に来ることがないと分かっていても、だ。



どんよりとした暗い雰囲気が前方座席に漂い、銀子ちゃんがゆっくりと車を発信させた。


その時。


「そういえば、僕も何かの役に立ちたくて世界中のゲーマーの方に紫苑さんの事聞いてみたんです。…でも、有力な手がかりはありませんでした」


先程俺の気分を下げた事を悔いているのか、若干トーンの下がったサイコパスの声が聞こえてきた。


「…あいつが国外に居る可能性は限りなく低いだろうなぁ、うん」


運転しながら、銀子ちゃんが突っ込む事もせずにただ静かに呟いた。



ママの手料理に着くまでの間、俺達は各々が紫苑ちゃんについて思いを巡らせ。


そんなこんなで、車内の空気は最悪だった。
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