LOVEBAD~ヤクザの息子の副社長と最低最悪の身籠り婚~

「なんで、文乃が泣くわけ?」


「分からないけど…。
ただ、私にも姉が居て…。
もし、お姉ちゃんがそうやってある日突然居なくなったら…と思ったら…。
それに、永倉副社長、凄く辛そうで…前もそうでしたけど、二葉さんの名前聞いたら、本当に辛そうで…。
大切な人がそうやって急に居なくなったら…悲しいですよね…」



その瞬間、グッと引き寄せられ、
永倉副社長に抱きしめられた。


永倉副社長はもうお風呂は済ませているのか、とてもいい匂いがして。


なんだか、とても安心する。


「俺、お前に酷い事ばっかり言ってんのに。
そうやって、俺の為に泣いてくれるんだ?」


大嫌いなはずのこの人なのに。


この人が悲しいと、私もとても悲しくて。


涙が溢れて来る。



「今週の日曜日、俺休みだから。
その日、俺、一度ちゃんと文乃の両親の所に挨拶に行く。
式も、出産してからどうするかちゃんと考えよう」


その言葉に、少し体を離して、この人の顔を見た。


至近距離で私を見るその目は、とても優しくて。


「え、私の親に挨拶?
式も…」


「そう。
こんな形で急に結婚とかになったけど。
文乃との事、これからはちゃんとするから」


そう言って、永倉副社長の顔が近付いて来て、
私の唇とこの人の唇が重なった。


もしかしたら、またこの人に騙されていたりするのかな?と思う気持ちもあるけど。


騙されてもいいような気もしてしまった。


キスが段々と深く激しくなって行くのと比例して、
込み上げて来る、つわりから来る吐き気。

思わず、唇だけじゃなくて、この人から体を離した。


「待って!吐きそう」


「は?吐きそうって、なにそれ?」


永倉副社長の表情が歪んで行くのを見て、あ、また誤解される、と思い。


「つわりです!
つわりでちょっと気持ち悪くなって。
キスのせいじゃなくて!」


そう言いきると、その表情を緩めてくれた。


この人、けっこう面倒臭い人なんだな、と思ったけど。


今まで、こうやって誤解をちゃんと解かなかった私も悪かったのだと思う。


「キスしちゃったから、うがいしといて。
風邪移したら嫌だから」


そう言った永倉副社長の顔は優しくて。


なんだか、以前のようにこの人を見ていて、胸がドキドキとした。


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