LOVEBAD~ヤクザの息子の副社長と最低最悪の身籠り婚~


「岡崎社長は、結婚しないのですか?」


「何、急に?!」


翌日、朝からこの人に同行して、
付き合いのある広告代理店の営業部長と、打ち合わせ。


その場所は[甘カラ広場]の、新店舗。



今現在、社用車ではなくて、岡崎社長自らが運転する車で、その場所へと向かっている。


岡崎社長の車は、真っ赤なポルシェで、けっこうこの人らしい、と思ってしまった。


「確か、永倉副社長の六歳上だから、
岡崎社長は今年で38歳ですよね?」


誰かから、以前そう聞いた事がある。

38歳なら、結婚していてもおかしくない年齢。


「そう。38歳。
どう、見えないでしょ?」


「はい」


確かに、この人はとても若く見える。

永倉副社長と同じで。



「結婚というか、恋愛自体。
俺達はどっか冷めてるからねぇ」


「俺、たち?」


「うん。俺達兄弟。
うちの父親がヤクザだから…。
昔ね、俺が中学二年の時、俺達の母親が、他の組のヤクザに殺されて。
交通事故に見せ掛けて、車で轢き殺されて」


その話は衝撃的で、もう自分がした質問さえも頭から消えてしまった。


「でね。
それでなのか、彼女とか大切な存在を作るのが、怖くなったのかも。
自分のせいで、この子を巻き込んだら、って…。
あ、でも、みー君は堅気だから、その辺りは心配しないで!
文乃ちゃんがそういった危険に巻き込まれる事はないと思う。
多分」


多分、なんだ、とちょっと不安になるけど。


ヤクザの組長の息子である、永倉副社長の私は奥さん。


確かに絶対にないとは、言えないかも。


「あの、次男の二葉さんがヤクザだったのは、
昨夜永倉副社長から聞きました。
けど、岡崎社長だって、永倉副社長と同じように堅気じゃないですか?
なんなら、母方の親戚の養子にまで入っていて。
なら、結婚しても大丈夫じゃないんですか?
彼女とか居ないんですか?」


そもそも、この人は彼女とか居るのだろうか?

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