裸足のシンデレラは御曹司を待っている
18
直哉の車にチャイルドシートを積み込み、村の保育所に向かった。家を出る前に保育所には早退させてもらう連絡を入れてあるので安心だ。
直哉の車はレンタカーとは言え、まずまずのグレード。私の軽自動よりも広さや乗り心地は格段に良い代物。座り心地の良い助手席に腰を下ろし、運転席にいる直哉を見ると視線を感じたのか、ニコッと笑う。

その笑顔を見てなぜか、さっき耳元で囁かれた「だから、今夜は泊まってくれるよね」という言葉を思い出してしまった。
頬が熱くなってしまい、手でパタパタ仰いでしまう。
「エアコンの温度下げる?」
と直哉に言われ、なんだか余計に恥ずかしい。

そんなやり取りをしているうちに保育所に到着する。建物の中から子供たちの元気な歌声が聞こえて来た。まだ、お迎えにはぜんぜん早い時間。他の父兄は誰もいない。
本当は、直哉と二人で真哉を出迎えたい所だけれど、そんな事をして面白おかしく噂されるのも不本意だ。念のため、直哉は保育所の外に停めた車で待機してもらった。

玄関脇の事務所兼職員室へ声を掛けると保育士さんが真哉を連れて来てくれる。

「急に用事が入ってしまいお迎えが早くなってしまいました。勝手言ってすみません」

「いいんですよ。シンちゃん良かったね。ママ早く来てくれたよ」

「ママー! ボクおむかえ、いっちばーん」

やんちゃ盛りの真哉、すでにテンション高めの登場。保育士さんに「ありがとうございました」と言って早々に車まで連れて行った。

「あれ? ママ、きょうはクルマちがうの?」

「今日は、特別な日なんだよ」

「あ、えほんくれた、おじさんだぁ」

車の横で待機していた直哉を見つけた真哉が手を振った。
直哉はそれを見て顔をほころばせ、子供に視線を合わせるようにしゃがみ込んだ。

私は、少し緊張して軽く咳払いをしてから、身を屈めて真哉に話掛ける。

「あのね、本当はおじさんじゃなくて、シンちゃんのパパなんだよ」

真哉は、口をポカンと開けて私の事を見ている。

「おじさんがパパ?」

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