炎のシークエンス
「いやあ、びっくりしたぞ、野次馬の中に心春を見つけた時は」
翌日。帰ろうとしていたところを勤務明けの連太郎につかまってしまった。何しろ連太郎の家は目と鼻の先。お互いの家の行き来なんて日常茶飯事だ。
「私もびっくりしたよ。消防士として働く連太郎を初めて見たから」
「もう、帰るのか?駅まで送るよ」
「平気、大丈夫」
そう断ったのに。
「そう?連太郎くん頼むわ。心春ったらご飯食べてないみたいだから、少し食料を持たせようと思ってたの。駅まで荷物持ってやってくれない?」
「そういうことなら心春の部屋まで送るよ。おばさん、たくさん持たせてやって」
「あらいいの?助かるわ」
「何言ってるのお母さん。連太郎、勤務明けだよ?疲れてるのに」
「じゃ、心春の部屋で寝かせてあげなさいよ。それともカレシと同棲してたりする?」
「あのねー、そんな余裕ないし」
お母さん飛躍しすぎ。そばで聞いていた連太郎が思わず吹き出して笑っている。
「大丈夫、荷物だけおいてすぐ帰るし。余裕余裕。久しぶりに都会の空気吸いたいし」
「連太郎が一緒なら車使うか?」
会話を聞いていたお父さんが、ごそごそと車の鍵を取り出した。
「おじさん、もしかしてかっけぇSUV車貸してくれる?」
「お前の運転技術を信用してないから、軽だな。小回りきくし」
「えーひでぇ」
笑いが起きる。こんなに笑ったの久しぶり。やっぱり、実家はいい。
結局私は、連太郎と車に乗ることになった。