炎のシークエンス
「けっ、マジでいけすかないヤツ。
おじさーん、おばさーん、塩ない?お清めしよう!あんな奴もう二度と来ないように」

連太郎はうちの玄関のドアを開けて叫ぶ。

「なんだ、連太郎。塩??どうした?」

父がその手に卓上用の食塩をもって玄関に顔を出す。
いやいや、たぶん連太郎が言ってるのはそんな塩じゃない。

「あの男、元上司が心春をいじめてた元凶だよ。おじさんそんな塩じゃなくてもっと景気よく撒けるヤツがいいよ」
「何!?心春、なんでそれを早く言わないんだ!俺たちはあの職場にも優しい人がいたんだなぁなんて思ってたんだ。かあさん、塩!たくさん持ってきて!」
「はいよ。しっかり撒いてちょうだい。心春、大丈夫??」

連太郎と父が二人で塩を撒き、私は家に入る。

「ちょうど連太郎くんが通りかかってくれて良かったわ。私たち、全然気づかなくて。心春ったら何も言ってくれないんだもの」
「ごめん。心配かけたくなくて……。
いけない、もうこんな時間だね。父さんと母さんは仕事始めて?私も着替えてくる」

「今日は休んでいいぞ、心春。大変だったな。急ぎの仕事も入ってないし、ゆっくりしろ」

塩を撒き終え父が戻ってきた。
< 59 / 78 >

この作品をシェア

pagetop