炎のシークエンス
「じゃあさ、気分転換に出掛けようぜ、心春。そうだな、心春の好きな絶叫マシンに乗りにいかね?」

父の後ろから、連太郎がひょっこり顔を出す。

「いやいや、絶叫マシンって……連太郎は24時間勤務終わったばっかりなんだよね。勤務明けの今日は自宅で爆睡じゃないの?」
「優しいなぁ、心春は。でも大丈夫、俺の体力は底なしだから。おじさん、おばさん、心春連れ出していい?」
「お、デートか。いいぞ、たまには羽を伸ばして楽しんで来い。
連太郎、小遣いはあるのか?すこし出してやろうか?」
「おじさーん、俺もう社会人だよ?給料だってちゃんともらってるし、まかせて、大丈夫」

うちの両親から見れば連太郎はまだまだ高校生みたいな扱い。そうだよね、筋肉が増えたくらいで優しいところも全然変わってないもん。

「そうよ、あの泣き虫が今や立派な消防士さんだもの。まかせるわ。心春、楽しんできて」

うちの両親の許可を取るなんて、連太郎も策士だ。両親にまで喜ばれて、断りにくくなる。
私は連太郎とテーマパークに行くことになってしまった。
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