炎のシークエンス
「今度は香水でも振りかけてみようかな」

まだにおいを気にしてるのか。

「やめとけ。俺にも経験があるけど、においが混じって悪化するぞ。
前に、知り合った女の子が会いたいって連絡くれたんだ。うれしくって仕事終わりに大急ぎで行ったらさ、その子、急用思い出したって帰っちゃって、それきり。
急いでたから、シャワーも浴びずに香水ぶっかけて行ったのがまずかったみたい。
可愛い子だったのに。チューもさせてもらえなかった…」

「なぁんだ。お互い振られたわけね。もー飲むしかないよ。すみませーん、レモンハイおかわりくださーい」

女の子の話をすれば少しはヤキモチを妬いてくれるかと思ったけど、心春は俺の恋愛話には興味がないみたいだ。


まぁ、焦ったってしょうがない。心春はまだ本来の心春に戻ってはいない。ガリガリに痩せてしまった体も、すぐに曇りがちの表情も、少しずつゆっくりと戻っていけばいい。
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