仕方なく結婚したはずなのに貴方を愛してしまったので離婚しようと思います。
「先に食べてよう」
ダイニングテーブルに並べた朝ごはん、穂乃果は端に座った。
「美味しそうだね。穂乃果が作ってくれたのかい?」
声が聞こえたと同時に後ろから肩に重みを感じ、玲司が後ろから穂乃果の作った朝食を覗き込んできた。
「れ、玲司さん起きたんですね。朝ごはん出来てますけど食べますか?」
「もちろんだよ。それより体調は大丈夫なのかな?」
玲司は穂乃果の額に手を回し熱がないか確認してくる。
「あ、あの本当に下がりましたからっ」
玲司の手をどけ、後ろにいた玲司の身体を押し離した。なんだか胸のあたりがザワザワするからくっつかないで頂きたい。多分そのざわざわは嫌悪感なはずなのに触られても嫌ではないという矛盾が穂乃果の中で発生していた。
明らかに押されて触れることを拒否されているはずなのに嬉しそうに玲司は笑顔のまま「ならよかった」と頭をぽんっと触りキッチンへ向っていく。
(拒否したのに笑顔って、あの男ドMなのかしら)
玲司はどこからコーヒー豆を出してきて豆を挽き始めた。くるくると豆を挽くその姿が異常にかっこいい。寝起きのゆるーい服なのに、なんなら髪も少し乱れているのにキラキラしてみえる。