仕方なく結婚したはずなのに貴方を愛してしまったので離婚しようと思います。
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写真撮影に満足したのか車内は玲司の鼻歌がBGMになっている。なんの歌なのか聞いてみたら「幸せのうた。僕の作詞作曲」とかいう怖すぎる返事が返ってきた。
「あの、私桃果の病院に寄りたいんですけど、病院で下ろしてもらってもいいですか?」
「ああ、もちろんだよ。でも僕今から仕事に行かないといけなくて帰りはタクシーで帰ってきなさい。いいね?」
休みじゃなかったんかい、とツッコミたくなったがやめた。
「いえ、お金が勿体ないのでバスで帰りますよ。確かバスが出てましたよね?」
この家に引っ越すにあたって桃果の入院している病院が遠くなるから事前に交通機関を調べておいたのだ。確かバスが出ていたはず。
「いや、駄目だ。タクシーで帰ってきなさい。それか秘書の原口を迎えにいかせるよ」
さっきまであんなに鼻歌を歌って上機嫌だったのに玲司の声のトーンが少し下がった。
「でも……」
「いいんだよ。タクシーのほうが安全だろう? それが嫌なら病院には送っていけないな」
まぁ別についでに送ってもらおうと思っただけだ。一度帰ってから病院に行けばなんの問題もない。
「家に帰ってからバスで行こうとするのも駄目だ。かならずタクシーを使いなさい。お金のことは気にしなくていいから。このカードを穂乃果に渡すから好きに使って」
「なっ……」
考えている事がバレていた。まぁお金はもったいないけれど玲司が出してくれるということなのでありがたく、なんだか黒光りしているクレジットカードを受け取った。