仕方なく結婚したはずなのに貴方を愛してしまったので離婚しようと思います。

8、ホームセンターと独占欲

 
 お昼ごはんを一人で食べ午後の優雅なひと時……ではない。暇だ。玲司の家に引っ越してきて一週間経ったがやることが何もない。動いていないと色々考え込んでしまうし、じーっとしているのが性に合わない穂乃果は掃除をくり返したが元から綺麗な家だったので大掃除するような場所もなく、やることがない。気晴らしがてらスーパーに買物に行きたくても家から気軽に出ることを玲司から禁止されている。玲司はものすごく過保護だ。出る時は必ずタクシーを使い連絡をすること、と。玲司のお金だと分かっていても根っからの貧乏性の穂乃果はタクシーを使うのがもったいなくて結局まだ一度も家から一人で出ていない。


「でも、いい加減飽きたわ! 暇すぎる!」


 リビングの大きな窓から外を眺めると綺麗な秋晴れで雲が一つもなく綺麗に澄んでいる空だ。その時ふと庭の花壇に目が行った。綺麗な家なのにここだけが荒れてしまっている。不思議な場所だ。引っ越してきた日もこの花壇が荒れていることが気になったのを思い出した。


「そうだ。この花壇、綺麗にしようかな。近くにホームセンターがあったはず!」


 スマホで検索すると散歩に丁度いい距離にホームセンターがあった。


(歩いて十分ならタクシーを使わなくてもいいわよね)


 連絡だけはいれておこうと玲司のスマホに”散歩がてら近所のホームセンターに行ってきます”とメッセージを送り既読にならないがスマホを閉じて家を出た。
 歩きなれない道をスマホ頼りに歩き進める。玲司の家がある場所は閑静な住宅街。少し歩いて住宅街を抜けるとすぐに大通りにでた。大通りにでるとかなりの交通量に歩行者も多い。少し道が変わっただけでこんなにも雰囲気が変わるものかと驚いた。
 一人スマホの道案内通りに歩いていると嫌に背中に視線を感じた。べったりと誰かに見られているような、そんな気味の悪い感じだ。


(人が多いからそう感じるだけかしら)


 少し怖くななり一度止まって後ろを振り返っても通行人が歩いているくらいで不審な人など見当たらない。


(こんな昼間の人通りの多いところに不審者なんているはずないわよね)


 やっぱり気のせいだと穂乃果はまた前を向き歩き始めた。


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