仕方なく結婚したはずなのに貴方を愛してしまったので離婚しようと思います。

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 洗面所で穂乃果は自分の全身を鏡で確認していた。玲司に買ってもらった服は恥ずかしい気持ちを抑え込んでフィッティングした甲斐あって穂乃果の身体にピッタリだ。黒のカーディガンにグリーンの膝下レーススカート。普段着ないようなタイトな服に少し違和感を感じるがなんだか生まれ変わったような不思議な感じだ。服一つで気持ちが全く変わってしまうなんて。
 鏡の後ろにチラッと玲司の姿が映り、その顔は満足そうに口角を上げている。


「お、やっぱり穂乃果に凄く似合ってる。君はスラっとしていてスタイルがいいからタイトな服が似合うと思ってたんだ。出来る女って感じだね」
「で、出来る女になれるよう頑張りたいと思います」
「うん、穂乃果なら大丈夫。期待してるよ」
「っ……が、頑張ります!」


 ポンっと穂乃果の肩を叩いて玲司は洗面所から出て行く。頑張ります、そう、穂乃果は凄く気合いが入っていた。仕事が出来るという喜びもあるがそれよりも桐ヶ谷製菓に入り情報を得られるからだ。絶対に玲司の弱みを握ってやる、とキッと鏡越しに自分を睨みつけ同情厳禁と心の中で呟いた。

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