翠も甘いも噛み分けて
「あの日、スイが俺の背中を押してくれたのが決定打だったけど、それまでにも、スイがうまそうに俺の作ったお菓子を食べてくれる顔を見てるだけで嬉しかったんだよ。だから、自分が作るスイーツで、他の人もスイみたいに幸せそうな顔をして欲しいって思った。いわばスイは、俺の人生を決めるきっかけになった恩人なんだよ」

 幸成に改まってこんな風に言われると、翠はなんだか気恥ずかしくなる。なので、照れ隠しの言葉が口から出てしまう。

「ホント? 私、そんなすごいことなんてしてないよ? それこそきっかけはそうなのかもだけど、それからは高橋くんの努力の賜物だからね、そんなこと言ってたら、私、調子に乗っちゃうよ?」
「おう、いくらでも調子に乗ってくれ。今日はこれだけしか取り置きできなくて悪いけど、また明日、うまい奴を作っておくよ」
「やった! ありがとう。本当に毎日通っちゃうよ?」

 真剣な話も、こうして軽口でサラッと流したのは、お互いが照れ臭かったからだ。幸成は翠のお皿をトレイに乗せ、コーヒーのお代わりを持ってくると席を立ち、コーヒーサーバーを手に戻ってきた。サーバーの中にはちょうど二杯分のコーヒーが入っている。幸成はそれをそれぞれのカップに注ぎ入れると再び席に着く。

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