翠も甘いも噛み分けて
それから月日は流れ、ある日の放課後のことだった。数学で赤点を取った翠と幸成は、揃って補習を受ける羽目になり、六時限が終わった後に数学準備室に呼び出された。そこで一時間みっちりと補習を受け、二人とも抜け殻状態で教室へと戻ると、幸成が翠を手招きする。翠は死んだ魚の目のようにうつろな表情で幸成を見つめるも、その視線の先にあるお菓子で途端に元気が出た。現金な奴だと思われてもいい。日頃使わない脳を酷使して、疲れ果てている状態の時は、甘い物が身に沁みる。
おまけに幸成はサブバッグの中から紙パックのジュースまで取り出すと、一つを翠に手渡した。
「これ食ってから帰ろうぜ」
この時持ってきていたお菓子は、マドレーヌだった。いつもこうして手作りのお菓子を用意してくれてありがたい。幸成のお弁当は、男子高校生らしく特大サイズだ。それをいつもペロッと平らげている上に、こんなにも甘くて美味しいスイーツを食べても全然太らない。同じ量を翠が食べたら着実に身になるのに、女子とは時差で訪れる成長期のおかげで、どんなに食べてもスリムなままなのは羨ましいの一言に尽きる。
帰宅の準備が整い、マドレーヌを食べる前に手を洗ってくると言って翠は席を立つと、幸成も一緒に席を立った。
おまけに幸成はサブバッグの中から紙パックのジュースまで取り出すと、一つを翠に手渡した。
「これ食ってから帰ろうぜ」
この時持ってきていたお菓子は、マドレーヌだった。いつもこうして手作りのお菓子を用意してくれてありがたい。幸成のお弁当は、男子高校生らしく特大サイズだ。それをいつもペロッと平らげている上に、こんなにも甘くて美味しいスイーツを食べても全然太らない。同じ量を翠が食べたら着実に身になるのに、女子とは時差で訪れる成長期のおかげで、どんなに食べてもスリムなままなのは羨ましいの一言に尽きる。
帰宅の準備が整い、マドレーヌを食べる前に手を洗ってくると言って翠は席を立つと、幸成も一緒に席を立った。