翠も甘いも噛み分けて
 当たらずとも遠からずな幸成の言葉に、翠は一瞬言葉に詰まった。

「うん、ありがとう。……そろそろ披露宴会場に移動しよう? 私、もうお腹ペコペコだよ。今日のご馳走、楽しみにしてるんだから」

 翠は、なんとか幸成の言葉に返事をすると、踵を返した。幸成も翠の隣に並ぶと、一緒にチャペルを後にする。
 こうやって二人で話をするのも、実に十年振りのことだ。高校を卒業してからは、お互い進路が違ったこともあり、疎遠になっていた。

 一緒に並んで歩きながら、幸成がつい先ほど口にした言葉に翠は落ち込んでいた。実は先日、翠の職場の先輩が、非常階段で先輩の同期とタバコ休憩をしながら話をしているのを偶然聞いてしまったのだ。
 
『伊藤ちゃんは仕事もできるし、性格も天然で面白いし、多分痩せたらかわいいと思うけど、今のあの体型じゃ恋愛対象としては見れないな』

 一緒にいた先輩の友人も、この言葉を聞いて一緒になって笑っている。
 これを他の人に言われたところで気にするような翠ではないけれど、この発言をしたのが自分が新人の頃の教育担当だった先輩本人だったのだ。仕事もできるしいつも優しくて、見た目も華やかでモテモテなのを鼻にかけなくて、密かに憧れていた。仕事面でも、いつかこの人みたいになりたいと尊敬していただけに、ショックは大きかった。

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