天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 母はすっかり山上総合病院に関心がなくなってしまったが、事情を話せば一緒に考えてくれるはず。引退したとはいえ母は内科医だった。後任が決まる間だけでも、医師の資格がある母に理事長を引き受けてもらうしかない。

 医療資格を持たない私だけでは到底無理だから。

「はぁ……」

 なんとかしなきゃ。患者さんのために。

 私のせいでこうなってしまったんだもの責任をとらないと。

 啓介さんは私に呆れている。
 あの様子では一日も早く山上総合病院から離れたいに違いない。

 離婚届を送るとなると裁判にはならずに済むのかな。

 残る問題は嫌がらせのファックスと鈴本小鶴だけれど、裁判になったら私は多分負けるだろう。

 これまでのように冷静に、私の言い分を切り捨てるに違いない。

 浮気をしていてもしていなくても、彼は私が太刀打ちできる相手じゃないんだと、今日あらためて思い知った。流樹が彼には勝てる気がしないと言った通りである。

 彼は隙がなく、強い人だから……。

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