天才脳外科医はママになった政略妻に２度目の愛を誓う
　私が不貞をはたらいたなどという作戦は絶対に反対するだろうから言えなかった。

「それでどうだったんですか。啓介さんとのお話は？」

「離婚届を送ってくるって」

　言ったそばから心が痛んで、サトさんの顔を見られない。

　自分が望んだ結果なのにこんなに悲しくなるなんてね。

　乃愛を見つめたまま微笑みを作る私に、サトさんは「そうですか。お疲れ様でした」とだけ言って手を差し出す。

「乃愛ちゃまをお預かりしましょう。お着替えどうぞ」

「ありがとう」

　サトさんに乃愛を託し、急いで自室に向かった。

　扉を閉め、喉もとまで出かかった嗚咽を必死でこらえた。
　悲しんでいる余裕はない。急いで病院を守る対策を練らなければ。

　楽な服装に着替えて、まず母にメッセージを送る。

　画面が滲んで仕方がない……。

【お母さん、こっちに帰ってきて。病院の今後のことで相談したいの】

　これで連絡があるだろう。

　軽井沢で密かに出産したいと伝えたとき、母には啓介さんと離婚を考えていると話してある。病院を彼に渡したいと言ったときも反対はしなかった。

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