天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 いきなりの先制攻撃に頭の中は真っ白になる。

 流樹はどこまで話をしたんだろう。まさか、なにもかも?

 唖然とする私を尻目に、啓介さんは窓際から離れ、ソファーに腰を下ろす。

「莉子。今から言う話を信じてほしい」

「待って」

 その前にまず謝らなきゃ。

「啓介さん、調査会社の件ごめんなさい。確認しました。浮気ありきで証拠を作ろうとしたそうです。費用を全額返すから許してほしいと言ってきました。本当にすみません」

 深く頭を下げた。

「いや、莉子は謝らなくていい。君が悪いわけじゃないんだ。顔を上げて座ってくれないか」

「はい……」

 サトさんとは別の家政婦さんが持ってきてくれたトレイを受け取り、ひとまずコーヒーとケーキを勧める。

「どうぞ」

「ありがとう」

 啓介さんは落ち着いていて、流樹と一緒に会ったときのような剣呑な雰囲気を漂わせてはいない。

 声も穏やかで、私がよく知る彼だ。

 流樹はもしかして、子どもの父親が啓介さんだと言ってしまったのかな。だとしても……

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