天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
「その通りだ。必ず解決して真っ先に報告する。だからそれまで信じて待ってほしい」

 啓介さんは少し前のめりになり、眼差しからは、どうか信じてほしいという心の声が聞こえてくるようだ。

 信じていいの?

 これまでの経緯からして、彼が嘘をついているとは思えない。

 院長も啓介さんを褒めていた。父もいつだって啓介さんに感謝していたのに、私はただ、彼を誤解して苦しめて……。

 私にはもう、彼の訴えを聞く資格なんてないんじゃないのかな。

 取り返しのつかない嘘をついてしまったんだもの……。


「あの子に会わせてもらえないか?」

 え、でも。

 戸惑う間もなく「失礼します」と、サトさんが乃愛を抱いて入ってきた。

「サトさん」

「ようやくパパが会いに来てくれましたね」

 あっ、もう。サトさんったら。

 サトさんは以前から、もっとなんでも啓介さんに言わなきゃだめだと言っていた。
 悪阻で酷いときも『どうして呼ばないんですか』と。『遠慮しちゃいけませんよ』とも。
 



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