天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 カフェの入り口に入ってくる客の姿が見えた。乃愛とちょうど同じくらいの子どもを抱いた女性。彼女は鈴本小鶴ではないか。

「どうして……」

 思わず声が出る。

 驚く私に釣られて振り返った島津のお母さまは、溜め息まじりに言う。

「当事者の彼女も呼んだのよ」

 どういうこと?

 なぜお母さまが彼女を知っているの?

 戸惑ううち歩いてきた鈴本小鈴は、私の向かいの席に腰を落とす。

「失礼します」

 彼女は島津のお母さまにも私にした同じ話をしたの?

 彼女が抱いている子は、啓介さんの子どもだと。

「また会ったわね」

 鈴本小鶴は私に微笑みかけ、肩をすくめる。

「銀座のホステスと名前だけで、見つかってしまったわ」

 まったく悪びれる様子もなく彼女は笑う。

「山上のおかあさまからお電話を頂いて、見つけだしたのよ」

 島津のお母さまは淡々と言う。

「それで、この前私に話した通り正直に言いなさい」と小鈴に促した。

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