天才脳外科医はママになった政略妻に２度目の愛を誓う

　小鈴が頼んだオレンジジュースが届くと、ひと口喉を潤した彼女は、啓介さんとの馴れ初めから話し始めた。

　出会いは高校生の頃。母子家庭だった彼女に啓介さんは優しかったという。

　啓介さんは仕事も紹介してくれようとしたが、結局彼を頼らず高校卒業と同時に水商売の道を選んだ。

　関係はあくまで友人だったが、ある時酔った彼に襲われたのだという。

「やめてと頼みましたが、男の力ではどうにも抵抗できず」

　うっすらと涙を浮かべる彼女の横で、島津のお母さまが額に手をあててガックリとうなだれた。

「私と啓介さんが交際しているかのように莉子さんに言ったのは、レイプよりはまだマシかと思ったからです。私に酷い仕打ちをした彼を許せませんでした。莉子さんに恨みはありません」

　私も母も唖然としたまま、言葉を失ったようにただ彼女の話を聞くだけだった。

　とても嘘には聞こえない。

　だが、ハッとして我に返った。啓介さんがそんなことをするはずない！

「あなた、まだそんな嘘を！」