天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 私が抗議するも彼女は動じない。

「必要とあれば鑑定してもらってもかまいませんよ?」

 この自信はどこからくるのだろう。

 そこまで言われては、証拠はあるんですかとは言えない。

 啓介さんに渡してしまったあの写真の男性が、本当の父親なんでしょうとも言えなかった。今写真は手許にないから。

 レイプという言葉は衝撃的だ。母ふたりも絶句したままでいる。

 万にひとつ彼女の話が真実なら、啓介さんが彼女に嵌められた可能性だが、でもそれは、啓介さんから話を聞くしかない。

 必死に考えるも、私に彼女の証言を覆す手だてはないのだ。

 ゆっくりと顔を上げた島津のお母さまが彼女を振り向いた。

「念の為、その子の髪を少しもらってもいいかしら。事情がどうあれ、啓介の子であるなら知らぬ顔はできないし」

「わかりました」

 島津のお母さまは予想していたのか、バッグから小さなハサミとビニールの小袋を取り出して彼女に差し出した。

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