天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
「私があれ以上、彼女に反論しなかったのは、赤ちゃんがいたからです。あんな一方的な言い分を聞く必要はありません」

 たとえ鑑定したとして、結果がどうあっても、きっと理由があるはずだ。

 なのに私をジッと見るお母さまの視線は、あきらめに満ちている。

「お母さま、まず、啓介さんに聞いてみましょう。彼女だけの話では不公平です」

 恐らくお母さまはまだなにも啓介さんに聞いていないのだろう。聞いてさえいればこうはならないはずだもの。

 島津のお母さまは「島津の血なのよ」と、ポツリと言った。

 え、どういう意味?

「私もね、昔は莉子さんのように純粋だったわ」

「お母さま?」

「子ども。あの子の小さい頃によく似ていた。莉子さんもそう思ったでしょ?」

「それは……」

 ズキッと心が痛む。

 子どもは男の子だった。

 正直、似ていたような気もする。あの子も福耳だったけれど鈴本小鶴も福耳だ。それだけで似ているとは言えない。

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