天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 似ていると言うなら乃愛の方がもっと啓介さんに似ているではないか。

「許してはだめなのよ、莉子さん。信じたつもりでも、疑惑は心のどこかでくすぶり続けるわ。大きくなることはあっても、消えはしないの。あなただって一度は離婚を決意したでしょう?」

 それは……。

「で、でも私は啓介さんと話し合って、やり直していくと決めたんです」

「啓介は忘れて幸せを掴んでちょうだい」

 異論は受け付けないという言い方だ。

「お母さま、私は――」

 額に手をあてた島津のお母さまは立ち上がった。

「ごめんなさい。また連絡します。精一杯お詫びはさせていただくわ」

 慌てて追いかけようとすると「やめなさい」と母に、手を掴まれた。

「そっとしておいてあげなさい」

「でも」

「誤解だとしても、あなたがなにを言っても説得力はないわ」

「だけどねお母さん――」



 せめて母だけは啓介さんを信用してあげてほしいと思ったけれど相手にしてもらえなかった。

「とりあえず一緒に軽井沢に帰りましょう」

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