天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
「食事は?」

「済ませてきたよ」

 戻ったら説明すると電話で言われたきりだが――。

 沈痛な表情を見る限り、状況は芳しくなさそうだ。たった三日とは思えないほどのやつれ具合だ。

「あの……啓介さん? 大丈夫?」

 啓介さんが重たそうに口を開く前に、母がリビングに入ってきた。

「こんばんは啓介さん」

「この度は申し訳ありません」

 母に向き直った彼は頭を下げる。

「まあいいからどうぞ座って」

 乃愛は寝室にいる。サトさんが見てくれているから心配はない。

 なにから話をしたらいいか。迷っていると、啓介さんが胸ポケットから封筒を取りだした。

「俺のほうは記入済みだ。提出はお願いしたい」

 ハッとして息をのんだ。

 封筒の中身はまさか、離婚届なの?

「啓介さん、まずは話を聞かせてくれる? それでどうなったの?」

 ショックが大き過ぎてなにも言えない私の横で、母が冷静に聞いた。

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