天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 これまでも散々お世話になっている院長に無理は言えない。不安を乗り越え、母が理事長となり私が副理事長として経営に携わると決まった。

 父、そして新生山上の礎を築いてくれた啓介さんへの恩返しのために、がんばろうと思っている。

 手探り状態でスタートした割には、大きな問題もなくここまでこれた。

 若いが実力のある部長たちと、部下の信頼厚き叩き上げの看護師長。優秀なコンサルタント。そして、誠実な院長が細かく目を配ってくれるおかけである。

 要は彼らのような人材を適材適所に配属させてくれた啓介さんのおかげだ。


「いらっしゃい」

 お客様はソファーに座るなり「今日は暑いわ」と溜め息をつく。

「もう九月ももう終わるっていうのにね。アイスコーヒーでいいかしら?」

「ええ、ありがとう」

 お客様は、医療提携しているクリニックの奥様だった。

 年齢は母より少し下、アラフォーの彼女はやり手で、美容に特化したオートクチュール医療サロンの運営もしている。
 お客様には医療係者も多く情報通の彼女との交際で得るものは大きい。

< 163 / 286 >

この作品をシェア

pagetop