天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
「すまなかった。本当に」

「どっちもどっちって言っていいわよ」と小鶴は笑う。

「啓介。あなたが離婚してまで守りたかった島津の平和。崩れちゃったね」

「別にいいさ、いつかはこうなるとわかってた」

 それに俺が守りたかったのは莉子と乃愛だ。

 島津家の平和なんぞとっくに壊れている。

「小鶴、それでお前の気は済んだのか?」

「済んだわ。あの人を見て思った。追い詰められて弱ったように亡くなった母は不幸だけど、あの人は生きながら不幸だもの。私は十分復讐を果たしたからもう満足よ」

 小鶴はスッキリとした表情をしている。

「そうか」

「謝らないけどね」

「謝られても困る」と笑った。

 これで小鶴がおとなしく我慢するだけの性格だったら、それはそれで自責の念に駆られてやりきれなかっただろう。

 小鶴の母親は、俺の母に責められて逃げ回る人生だった。父がどう手を尽くしても母は彼女の居場所を突き止めた。執念に取り憑かれていたんだろう。

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