天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 母は父の監視も続け、それは小鶴の母が亡くなるまで続いた。少しでも怪しいと狂ったように怒鳴り暴れ手がつけられなくなる。この鬼が自分の母なのかと子供心にゾッとしたものだ。

 父は『彼女の同意なしに関係を持った。俺が悪いんだ』と言い続けていた。

 二年前、俺はあらためて父に、本当に小鶴の母を無理矢理襲ったのかと聞いた。

 父は『違う』と答えた。

『だが、そうとでも言わなければ彼女を守れなかった』

 いつかその話も小鶴に聞かせようと思う。母の目が黒いうちは無理だが。

 二年前とある料亭で俺と兄と父そして小鶴の四人で会い、話し合ったが、成人してから小鶴が父に会ったのは初めてだったらしい。

 だが再会を喜ぶ余裕はない。父は小鶴に『すべて俺が悪いんだ。すまなかった』と、謝った。

 小鶴はジッと父を見て泣いた。

『お母さんは亡くなる直前まで、あなたに会いたいと言ってました』

 父も泣いた。駆けつけたかっただろうに、そのとき父はニューヨークにいたそうだ。

 我が家の不幸と闇。

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