天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 父が小鶴の母に逃げたくなった気持ちはわかる。

 だが、それでも母は実家の力で島津が最も苦しいときに助けてくれた。盲目的にただ父を追い求める母を父は見捨てられなかったんだろう。

 そんな母でも俺のたったひとりの母だ。

 父への執着を除けば、俺や兄には心優しい母である。病気だ異常だと言って見捨てたりはできない。血縁とはそういうものかもしれない。

 胸の中の重さを流し落とすように冷めたコーヒーを飲むと、小鶴が「啓介」と穏やかに言った。

「私結婚しようと思うの。子どもの父親とね」

「そうか、よかったな。お祝いなにがいいか考えておけよ」

「うん。ありがとう」

 公な交流は多分これからもできないだろうが、小鶴は俺の妹だ。心から幸せでいてほしいと思う。彼女の母親の分まで。

「そういえば偶然莉子さんに会ったわよ」

 ハッとして小鶴を見ると小鶴はクスクスと笑う。

「心配しないでよ。彼女のことになるとすぐムキになるんだから」

「それはお前が――」

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