天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 啓介さんの子どもが欲しい?

 私と彼はもう他人なのだから仕方がないとはいえ、正直そんな話は聞きたくはなかった。

 私だって彼の再婚を考えなかったわけじゃない。

 ただなんとなく、彼がアメリカにいるからと安心していた。

 例えばアメリカで結婚して、ときどきしか帰国しないで、となれば、さほどつらい思いもせずに、自ずと気持ちは離れると思っていた。

 でも彼が日本にいるなら別だ。

 こんなふうにときどき顔を合わせるとなると、私は……。

 グラスとお皿をスタッフに渡し会場の外へ出て、フロアラウンジのソファーに腰をおろす。

 飲み過ぎてしまったようだ。頬に手をあてると熱いし少しクラクラする。やはり慣れないことはするもんじゃないと溜め息をつく。

 少し休んで先に帰らせてもらおう。

 なんのために懇親会に参加したのか考えて、苦い笑みが浮かぶ。

 私は無謀にも、再婚相手を探してみようと思った。

< 208 / 286 >

この作品をシェア

pagetop