天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 子ども扱いされて当然だ。怒るなんて筋違いも甚だしい。

 しばらくそのまま乃愛の写真を見つめ気持ちを落ち着けて、涙を拭き、鏡に向かって笑顔を作る。

 さあ、駄々っ子のような態度を啓介さんに謝らないと。

 呼吸整えてフロアラウンジへと続く出口へ向かう。

 もしかしたら啓介さんが外で待っているかもしれないと思ったが、ラウンジに彼の姿はなかった。

 せめて、ちゃん謝りたかったな……。

 残念で申し訳ない気持ちを引きずり歩き始めると「莉子」と後ろから声をかけられた。

 振り返ると、足早に階段を上ってくる啓介さんが見えた。

「啓介さん……」

「大丈夫か?」

 心配そうに眉尻を下げる彼に、しっかりと頭を下げた。

「ごめんなさい。さっきは失礼な態度をとって」

 そして精一杯の笑顔を向けた。

「いや……」

「ダメですね、酔ってしまいました。でももう落ち着きましたので帰ります」

「そうか。今、タクシーをキープしたんだが」

「あ、ありがとうございます。じゃあせっかくなので」
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