天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
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 お見合いか……。

 啓介さんとのお見合いは、なにしろ初めてだから緊張したな。前もって写真で見ていたとはいえ、実物は予想以上に素敵で仰天したんだよね。

 啓介さん着物で現れるんだもん。

 懐かしいワンシーンを思い出し、自販機の前に立った。

 どれどれ、たまには炭酸の利いたジュースにしようかな。

「山上副理事長、お見合いするんですって?」

 ギョッとして、自販機のボタンを押す手が止まる。振り返ると真知子先生がいた。

 誰にも言っていないのに、なぜ知っているのかはなはだ疑問だが、隠しても仕方がない。

「よくご存じですね」

 気を取り直してボタンを押した。

 ガラガラと音を立てて落ちたペットボトルを取る。よく冷えたレモン風味の炭酸水だ。

「まあでも、試しにお会いしてみるだけですよ」

 苦笑混じりに答えると、真知子先生はくすっと笑う。

「相手が私の知り合いなんですよ。会うだけなんて彼、ガッカリだろうな」

 なるほど、そういう理由で知っているなら納得だ。

「そうでしたか。大丈夫、真面目な気持ちでお会いします」

 笑ってごまかしたが、今週末私はお見合いする。

 懇親会の帰りのタクシーで密かにお見合いしようと思ったのを、まるで神様が聞いていたかのように縁談が舞い込んだのだ。

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