天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
「母は父への執着が異常でね。小鶴の母親を追い詰めて死に至らしめたようなものなんだ。小鶴の母は小鶴を守るために祖母に彼女を預けた。父も必死で小鶴を隠したそうだ。会えば母に見つかってしまうと、小鶴にも会わずに……」

 苦悶の表情を浮かべる彼は、コーヒーをひと口飲む。

 私もかける言葉が見つからず、同じようにカップに手を伸ばした。

「母が小鶴の素性を知ったらまた――。そう思うと恐ろしくてね。小鶴を守るためには小鶴の子どもが俺の子だと誤解されたままでもいいと思った」

 そんな事情が……。

 離婚を申し出たときの啓介さんの様子から、ただならぬ状況なんだと、朧げながら想像はしていたが、彼の口から実際に聞くと事の重大さに動揺してしまう。

 彼はアメリカに経った理由から、帰ってきた理由になった事件まですべてを話してくれた。

 お母さまが小鶴さんを襲い、警察沙汰にまでなったという、あまりにも衝撃的な内容に私は両手で口もとを覆った。

「そんな――」

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