天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 彼がいてくれるだけで頼もしいとか安心感があるという前提の話だが、やはり畏怖の念を起こさせる存在であるようだ。

 こうして、高菜漬けと明太子のおにぎりをうれしそうに頬張る彼を、皆は知らない。

「やっぱり莉子が作るおにぎりは旨いな」

 ふと、彼と乃愛の笑顔と重なった。

 今朝、シラスを混ぜた小さなおにぎりを食べた乃愛は『おいちい』と、こんなふうに笑ったのだ。

 親子なんだなとしみじみ思う。

「たくさん食べて」
「ありがとう」

 啓介さんはいつだってこんなふうに感謝を口にして褒めてくれる。優しくて心がとっても温かい人。

 とても庶民的で、よく笑みを浮かべる人なのに、私が知る彼と周りが思う彼とのズレが歯痒い。

「昨日のお昼は、院長と?」

「ああ。院長がいつも頼んでいる仕出し弁当を一緒に頼んでもらった」

 それならよかった。院長が頼む仕出し弁当は手作り感のある美味しい幕の内だから、きっと啓介さんの口にも合うはず。

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