天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 そうか、島津の家は通うには少し遠いから。申し訳ない。

 でも、ここで謝るとまた啓介さんさんを困らせてしまう。ごめんなさいを飲み込んで、うつむいた。

「ホテルは楽だな」

「え? どうして?」

「洗濯もしてくれるし、もちろん掃除も。食事も面倒ならルームサービスを頼めばいい」

「でも、気を使うんじゃない?」

 実家にいれば家政婦さんがやってくれるだろうに。

「いや全然。むしろ気が楽だよ?」

 あっけらかんと答える啓介さんは、本気でそう思っているようだ。

 島津家の食事は家庭料理ではなく、どちらかといえばレストランのメニューのようなコース料理だと言っていた。温かい家ではなかったとも話していたのを思い出す。

 彼はどこか孤独な人だ。
 心が安らげる温もりが必要な人。

 でも、周囲が感じる彼の印象やイメージは違う。

 看護師や若いドクターたちは口々に言う。

『いつも厳しい表情をされているので、島津先生がいらっしゃると緊張してします』

『島津先生は完璧過ぎて近寄り難いです』

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